『寝巻きネコ』
チャーチルが、狂ったように怒鳴りつけきた。
「どうしていつまでたっても寝巻きネコをよこさないんだ」
その声は、ほぼ涙声に近い。
誰だって、寝巻きネコは手放したくない。
そんな事は、チャーチルだって知っている。
寝巻きネコを手放した事によって、毎日犬の遠吠えの真似をし続けなければならない。
僕は、その苦しさを嫌というほど味わっていた。
本当は、誰だって知っているんだ。
ただ気づいていない振りをしているだけ。
あの時、バッターボックスでばったの真似をするのが0.8秒でも遅れていたら…
と考えると、ぞっとしてくる。
チャーチルが、隣で甲高い声で何か喋っているが、僕の耳にはそんな言葉は全くと言っていい程入ってこなかった。
チャーチルが、まるで前を通り過ぎるとシンバルを叩き始める猿のおもちゃのように見えてきて、哀れに思えてきた。
そう言えば、チャーチルは猿に似てるな…
突然、目の前にトラックが突っ込んできた。
僕は、あまりにも突然の事過ぎてハンドルをきって、避ける事ができなかった。
全ての時間がゆっくりと流れていく。
ああ、これが死ぬ前の走馬灯ってやつかと思っていたら、トラックが僕の車にぶつかる直前に、びよよ~んって音を立てて、特大ジャンプをして避けてくれた。
まじ、びっくり!
これも寝巻きネコのおかげかな。
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